α-1,3-グルカン欠損株を用いた高密度分散培養技術
発酵での有用物質の生産倍増も夢ではありません!
概要
麹菌に代表される糸状菌は、発酵法による多種多様な有用物質の工業的生産に利活用されている。しかしその液体培養において、菌糸同士が絡まり集塊するため高密度培養と有用物質の増産には限界があった。本発明は、細胞壁多糖であるα-1,3-グルカンの合成酵素(AGS)遺伝
子を欠損する変異株を用いる、高密度分散培養方法に関する。
AGS遺伝子の欠損株では、細胞壁α-1,3-グルカン発現量が著しく減少し、ほとんど集塊せず液体培地中に分散する特徴がみられる(通常培養条件において、生育の悪化は認められない)。この欠損株を培養したところ、液体培地体積当たりの菌数並びに有用物質(右図ではモデルとし
てペニシリンとアミラーゼを使用)の生産量が増加した。
本発明の使用により、従来の製造工程(生産ライン)を変えずに、用いる菌体を変更するのみで、所望の物質の増産を期待することができる。
AGS遺伝子欠損株の増殖性/物質生産性
応用例
・酵素などの機能性タンパク質/ペプチドの工業発酵生産(増産)
・アミノ酸、抗生物質などの生理活性低分子化合物の工業発酵生産(増産)
・増産した糸状菌バイオマスそのものの活用(代替肉材料、ほか)
関連文献
[1] Yoshimi et al (2013) PLOS ONE 8(1) e54893
[2] Miyazawa et al (2016) Biosci Biotechnol Biochem 80(9),1853-1863.
知的財産データ
知財関連番号 : 特許第6132847号、ほか(米国、欧州)
発明者 : 吉見 啓、五味 勝也、阿部 敬悦
技術キーワード: 医薬(リサーチ・ツール)を含む、農学、食品