遺伝子特異的非バイアス増幅法
サンプル中のコピー比率を変えずに、目的遺伝子群の増幅や配列解析が可能です!
概要
T細胞受容体(TCR)レパートリー解析に代表される網羅的遺伝子発現解析では、cDNAライブラリを鋳型とするPCR増幅において目的遺伝子群のみに特異的で、かつその中でも特定の遺伝子にのみに偏らない非バイアスな増幅産物を得ることが重要である。従来、cDNAライブラリ作成時に付加するアダプターの配列を利用する増幅や、制限酵素で該アダプターを処理して特異性の上昇を試みる手法が開発されてきたが、過剰な未反応(残存)アダプターや不十分な酵素処理(消化)が影響し、特異的で非バイアスな増幅産物の取得には課題が残されていた。
本発明は、複数のウラシルを有するアダプターの採用と、アダプター導入後のcDNAへのウラシルDNAグリコシラーゼ(UNG)処理の採用により達成される特異的非バイアス遺伝子増幅法(図1参照)に関する。
図1.TCRレパートリー解析に本発明を用いた場合の特異的非バイアス増幅のしくみ
図2.TCRシークエンス成功率(=マージ成功率×TCR成功率)の比較
応用例
TCRシークエンス成功率を指標として、TCRレパートリー解析に本発明を用いた効果を従来のアダプターライゲーション増幅法と比較した。本発明では、TCR特異的な増幅はもちろん、十分なリード長とリード間オーバーラッ プ域を確保できる増幅とシークエンシングによる確かなTCR解析を達成でき、従来法より顕著に優れていることが確認された(図2参照)。 本発明はサンプル中のコピー比率を変えないシークエンシングを可能にするため、TCRレパートリ―解析のほかRNA seq解析、腸内細菌叢解析、環境DNA(セルフリーDNA)解析などにも利用できる。またそのためのキット化は、通常のPCR用キットにUNG含有アダプターとUNGを追加して達成できる。
知的財産データ
知財関連番号 : WO2016/136716(FR,GB,DE,JP,US)
発明者 : 小笠原 康悦
技術キーワード: TCR、TCRレパートリー解析、遺伝子