A型インフルエンザ用転写阻害剤:tFIT-DPQプローブ
既報分子の1000倍のウイルスRNAへの結合力!ウイルス増殖抑制効果から治療薬への期待も!
概要
毎年大流行するインフルエンザに対し、その感染を検査する既存の検査薬はあるが、感染後かなり増殖し、症状が出た段階(概ね感染から12~24時間後)以降でないと判定精度、感度が安定しないという課題がある。重症化を避けるべく感染初期に高精度で判定できる技術が求められるなか、本発明は、A型インフルエンザに共通し、特徴的なRNA鎖構造を標的とするペプチド核酸
(PNA)配列と低分子化合物との複合体を提供する。
本発明の複合体は、ウイルスRNAのプロモーター領域に特異的に結合するPNA配列部分:tFITと、UAAインターナルループ領域に結合する低分子化合物部分:DPQ(文献1)からなる。tFIT中には、ウイルスRNAに結合すると蛍光を発する物質が含まれており、ウイルス検知プローブとしての機能を有する(図1)。複合体のウイルスRNAへの結合力は、DPQ単体と比べ3桁向上している(解離定数:DPQ単体は50.5µMのところ、本発明は29nM )。標的RNA分子を含む被検体溶液に本発明の複合体を混合し検出器で計測する(所要時間2、3分)のみで、1nM(約1010コピー)の標的RNAを検出できる。また、複合体数µMの濃度レンジではウイルスRNAの複製と転写を阻害できることも確認した(図2)。
tFIT-DPQプローブの構造式及びインフルエンザウイルスの阻害効果
応用例
・A型インフルエンザの検査薬(初期に検査)
・A型インフルエンザ治療薬探索のためのスクリーニングプローブ
関連文献
1. Chem. Commun., 2014, 50, 368.
知的財産データ
知財関連番号 : 特願2020-129884
発明者 : 佐藤 雄介、西澤 精一、田邉 貴昭、川口 淳史ら
技術キーワード: インフルエンザ、検査薬