生細胞の核小体RNA検出用蛍光色素
高輝度・高い光安定性・明瞭なLight-up応答を実現エンベロープウイルス検出・ワクチン品質検査へも応用可能
概要
市販されている細胞内核小体RNAイメージング色素はSYTO™ RNASelect™の1種類しかなく、さらにこの色素は生細胞に適用できない、光安定性に乏しい、蛍光波長が比較的短波長という課題を抱えている。佐藤雄介
准教授らは最近、SYTO™ RNASelect™の弱点を克服した、生細胞適合性を有し、高い光安定性・近赤外蛍光を示すRNAイメージング色素BIQ(文献1)を開発した。その一方で、RNA結合状態での蛍光量子収率は0.0085と小さく、蛍光輝度に関して改良すべき問題点があった。
本発明のBIOPはRNA結合時の蛍光量子収率が0.42を示し、BIQと比べて格段に高輝度な生細胞RNAイメージングを実現した。またBIOPはBIQ同様に、市販色素と比べて優れた蛍光特性を有している。また、細胞膜浸透性に優れており、短時間(20分)で生細胞内の核小体RNAを高いコントラストで染色することができる(下図)。更に重要なことにBIOPはほとんど細胞毒性を示さず、24時間以上の長時間観察も可能である。
BIOPはその優れた蛍光特性と膜透過性により、ゲノムRNAを内包するエンベロープウイルス(HCoV-229E, ヒト風邪コロナウイルス)の迅速検出(~10分)にも適用できる。これはBIOPがウイルスの脂質膜(エンベロープ)構造を透過し、内包RNAとの結合により、蛍光応答を示すことに起因している。
また、BIOPは脂質ナノ粒子型ワクチン(mRNAワクチン)の品質管理にも有用である。たとえばワクチンのRNA内包率やワクチンの品質低下に基づくRNA漏出の計測に適用できることを見出している。mRNAワクチンのモデル製剤を用いた場合、BIOPの検出限界は~107個/mLであるため、例えばファイザー社の
BNT162b2ワクチン(1製剤あたり約4×1013個/mL)には十分使える感度と考えられる。
性能・特徴等
応用例
・生細胞内RNA(核小体RNA)イメージング
・ ゲノムRNAを内包するエンベロープウイルス検出→簡易ウイルス診断への応用
・ RNAワクチンの品質検査用
関連文献
[1] Anal. Chem. 2019, 91, 14254. [2] ACS Omega, 2022, 7, 13744.
知的財産データ
知財関連番号 : 特許第7029841号、特願2021-200447、PCT/JP2021/030716
発明者 : 佐藤 雄介、西澤 精一、永富 良一 ら
技術キーワード: RNAイメージング、蛍光色素、mRNAワクチン品質管理