レチノイド受容体アゴニストとBRAF阻害薬を含む治療薬を組み合わせた治療
BRAFV600E変異癌の治療剤
概要
BRAFV600E変異は、複数のがん腫で認められ、他の分子サブタイプに比し、予後不良である。BRAF変異型大腸癌患者の治療において、BRAF阻害薬と抗EGFR抗体薬の2剤併用療法やBRAF阻害薬、MEK阻害薬と抗EGFR抗体薬の3剤併用療法による分子標的治療が開発され2020年に臨床導入された。しかしながら、いまだにBRAF変異型大腸癌は予後不良であり、さらなる有効な治療戦略が求められている。
そこで本発明は、レチノイド受容体(特にRARαまたはRXRα)のアゴニストが、BRAF阻害薬と抗EGFR抗体薬の併用療法またはBRAF阻害薬、MEK阻害薬と抗EGFR抗体薬の併用療法により治療効果を増強あるいは獲得耐性を克服し、 BRAFV600Eを伴う癌、特に大腸癌に対する有効な治療戦略となりうることを提案する。
研究結果
・ トレチノイン(TRE)はBRAF阻害薬+MEK阻害薬によって、RARαまたはRXRαを介してアポトーシス誘導能を増強し、BRAF変異型大腸癌細胞の増殖抑制効果を相乗的に増強させる化合物であることを発見した。
・ TREはBRAF阻害薬(エンコラフェニブ, ENC) +MEK阻害薬(ビニメチニブ, BIN) +抗EGFR抗体薬(セツキシマブ、CET)によるin vivoモデルでの抗腫瘍効果を相乗的に増強した。
・ その細胞増殖抑制を増強する効果はTRE以外のレチノイド(レチノール、タミバロテン、ベキサロテン)でも検証され、TREの前駆体であるレチノールではTREと同様に強い相乗効果が認められた。
展望
・ ヒトを対象とする国内医師主導治験を通した、本発明による治療法の有効性や安全性の検証。
・ BRAFV600E変異を有する他の癌腫(大腸がん以外)におけるレチノイド受容体アゴニストの効果の解析。
知的財産データ
知財関連番号 : WO2023/145530
発明者 : 吉田 裕也、高橋 雅信、石岡 千加史、谷口 桜
技術キーワード: がん治療薬、BRAF変異、レチノイド