培養中の低酸素環境化と粘度増加を改善した高分散性糸状菌
培養槽内の物理・化学・生物学的環境を総改善
→高コスパ高密度培養、発酵生産の進化形
概要
麹菌(Aspergillus oryzae)に代表される糸状菌は、蛋白質や低分子化合物の生産能力が高く、発酵法による工業的生産に利用されている。しかし、液体培養においては菌糸同士が絡まり集塊する性質があり、培養槽空間を最大限に生かした培養と物質の増産には限界があった。野生型株に比較して、培養液粘度と集塊形成が圧倒的に低下する高分散性糸状菌(AGΔ-GAGΔ、「関連発明・文献」参照)はこの課題を解決する技術である。一方、AGΔ-GAGΔは糸状菌としては極めて優れた培養物性を有するものの、その培養液粘度は酵母・細菌に比較するといまだ高く、より低攪拌動力(エネルギー)条件下でも高いガス分散性を有し目的産物の高生産を達成する低粘度株の開発が求められていた。
本発明は、AGΔ-GAGΔ株に新規の物性改変因子X遺伝子の欠損を追加導入した次世代高分散性糸状菌AGΔ-GAGΔ-ΔXに関する。本新株ではAGΔ-GAGΔ株に比較して、大幅な培養液粘度の低下による攪拌性能の向上が生産性の顕著な向上をもたらした。さらに界面活性タンパク質rolA遺伝子欠損を追加導入すると一層効果が高まる。

組換え酵素生産試験

応用例
・酵素などの機能性タンパク質/ペプチドの工業発酵生産(増産)
・アミノ酸、抗生物質などの生理活性低分子化合物の工業発酵生産(増産)
・増産した糸状菌バイオマスそのものの活用(代替肉材料、ほか)
関連文献
[1] 特許第6132847号、ほか(米国、欧州)(整理番号:T12-060)
[2] 特許第6647653号、ほか(米国、欧州)(整理番号:T16-155)
[3] Front. Microbiol. 10:2090. doi:10.3389/fmicb.2019.02090
[4] 生物工学会誌 102 (8) 406-409 (2024)
知的財産データ
知財関連番号 : 特願2025-22774
発明者 : 阿部 敬悦、薄田 隼弥、武藤 清明、宮澤 拳、吉見 啓
技術キーワード: 発酵、増産、麹菌、糸状菌、代替肉、高密度培養、省エネ